2009 年 70 巻 9 号 p. 2828-2832
症例は57歳,女性.前医にて胆石症のフォローアップ中,2006年12月のCTにて肝尾状葉に3cm大の腫瘍を指摘され,肝細胞癌の疑いで2007年1月に当院紹介となった.腫瘍は肝尾状葉から発生したように見え,CTで早期濃染し,MRでSPIOの取り込みを認めなかった.術前は肝細胞癌を念頭におき,手術に臨んだ.開腹して小網を切開すると,下大静脈前面に,血管に富む明らかに肝外性の腫瘍を認めた.触診すると血圧が250-300mmHg台に急上昇し,副腎外の褐色細胞腫と診断した.ニカルジピン静注で血圧コントロール可能であったので,愛護的操作で腫瘍を摘出した.周術期合併症は認めず,術後8日目に退院となった.術前,肝腫瘍と鑑別困難であったこと,尿中カテコラミン検査で異常値がなかったことが,術前診断できなかった原因であるが,原発不明の傍大動脈腫瘍については,副腎外褐色細胞腫も念頭に置く必要があると考えられた.