71 巻 (2010) 1 号 p. 252-256
硬膜外膿瘍は持続硬膜外ブロックの合併症の一つである.今回われわれは,肺癌に対する左肺下葉切除術の術後11日目に硬膜外カテーテル関連で硬膜外膿瘍を発症した69歳女性の症例を報告する.硬膜外膿瘍の診断に際しては,脊椎MRI検査がその存在や広がりを判断するのに決定的な役割を果たした.治療は穿刺吸引および抗生剤投与で行ったが,硬膜外膿瘍の細菌培養でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が検出されたため,抗生剤はVCMに変更して投与した.その後,神経学的な後遺症を残すことなく患者は回復した.硬膜外膿瘍の起炎菌としては,近年ブドウ球菌の中でもMRSAの占める割合が増えている.術後硬膜外ブロック施行時に背部痛を伴う発熱を認めた場合には,硬膜外膿瘍も念頭においた早期の検査や治療を行うべきである.