日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
食道癌術後に発症したたこつぼ型心筋症の1例
西野 豪志谷木 利勝澁谷 祐一福井 康雄岡林 孝弘堀見 忠司
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 71 巻 10 号 p. 2532-2538

詳細
抄録

症例は65歳,男性.胸部食道癌の診断で開胸食道切除術,胸腹2領域リンパ節郭清を受けた.術前の心機能検査で十分な耐術能があると判断されていた.術後経過良好であったが,術後第2病日,急激な呼吸状態悪化を認め,心電図検査でV3~V6のST上昇,超音波検査では左室の広範な壁運動低下を認めた.左室体部は嚢状の拡張があり,対照的に心基部の過収縮を認め,たこつぼ型心筋症の特徴的な超音波像であると思われた.冠動脈造影検査にて虚血性心疾患を否定したのち,心不全治療を行い,厳重に経過観察を行ったところ,第7病日にはSTは正常化し,超音波検査でも心収縮能は正常化した.
たこつぼ型心筋症の発症誘引として,消化器外科手術は重要であるが,食道癌術後に発症した報告は少ない.今回われわれは食道切除術後にたこつぼ型心筋症を発症した1例を経験したため報告する.

著者関連情報
© 2010 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top