日本臨床外科学会雑誌
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症例
成人肺芽腫の1例
宇戸 啓一別府 樹一郎島尾 義也前山 良田崎 哲大友 直樹上田 祐滋
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キーワード: 肺芽腫, 切除
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2010 年 71 巻 10 号 p. 2557-2561

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抄録

症例は57歳,男性.胸部CT検診にて右肺上葉に腫瘤影を指摘され当科紹介となった.CT上,腫瘤径は1カ月間に2cmから3cmへ急速に増大し,境界明瞭で内部不均一な造影効果を認めた.原発性肺癌を疑い手術を施行,術中病理診断の結果,肺癌と診断され右上葉切除術を行った.割面は32×40mm,境界明瞭,灰白色調,充実性であり一部に出血壊死を認めた.病理学的に胎児肺に類似する上皮性成分と未熟で核の異型が強い細胞が増殖する間葉系性分を認め,肺芽腫(pT2N0M0:pStageIB)と診断した.術後補助化学療法(Paclitaxel+Carboplatin)を施行し,術後約1年6カ月経た現在も再発を認めていない.肺芽腫は稀な疾患であり術前診断が困難であることが多い.早期診断と切除が唯一の根治療法であることから,急速な増大傾向を示す肺腫瘤の場合,本疾患を念頭におき診療を行うべきと思われる.

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© 2010 日本臨床外科学会
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