日本臨床外科学会雑誌
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症例
アンチトロンビンIII欠乏症に伴った上腸間膜静脈・門脈血栓症による空腸壊死の1例
恩田 真二田辺 義明遠山 洋一柳澤 暁小林 進矢永 勝彦
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2010 年 71 巻 10 号 p. 2624-2628

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抄録

症例は60歳,男性.1週間持続する軽度の腹痛を発症後に同部位の激痛および下血を生じ,当院に救急搬送された.腹膜刺激症状があり,腹部造影CT検査にて上腸間膜静脈・門脈に血栓を,また腸管の浮腫および腹水貯留を認め,上腸間膜静脈・門脈血栓症(superior mesenteric and portal vein thrombosis:SMVT/PVT)による小腸壊死の診断で,緊急手術を施行した.腹腔内には血性の腹水貯留がありTreitz靱帯より15cm肛門側の空腸が約65cmにわたり壊死していた.壊死腸管のみを切除し,一期的吻合を施行した.術後ヘパリン,ワーファリンにて抗凝固療法を行った.術後の血液凝固線溶系検査にてアンチトロンビンIII(antithrombin-III:AT-III)の低下を認め,AT-III欠乏症によるSMVT/PVTと診断した.

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© 2010 日本臨床外科学会
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