日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹腔鏡下結腸切除後に発症した上・下腸間膜静脈・門脈血栓症の1例
池田 純園田 寛道糸川 嘉樹小出 一真谷口 史洋塩飽 保博
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2010 年 71 巻 10 号 p. 2644-2649

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抄録

腹腔鏡下大腸切除後に上腸間膜静脈・下腸間膜静脈・門脈に血栓症を合併した1例を経験したので報告する.症例は68歳女性の盲腸・S状結腸二重癌で腹腔鏡下に回盲部・S状結腸同時切除を行った.発熱と腹痛のため術後6日目に造影CT検査を施行したところ,上腸間膜静脈・下腸間膜静脈・門脈右枝に血栓形成を疑う所見を認めた.腸管うっ血の所見は認めなかった.絶食・抗生剤とヘパリン投与にて経過観察したところ軽快し,術後11日目に食事を再開した.14日目の再検CTにて血栓の増大を認めたが,無症状であるためワーファリン内服に変更し外来経過観察とした.術後78日目には検査上血栓は消失した.術後99日目のCT検査では上腸間膜静脈の空腸枝分岐部末梢と下腸間膜静脈が虚脱し,空調枝が代償性に拡張していた.明らかな原因は不明であったが,辺縁静脈を介した血行が良好であったため,うっ血や肝障害をきたさなかったものと考えられた.

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© 2010 日本臨床外科学会
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