2010 年 71 巻 10 号 p. 2650-2655
症例は81歳,女性.既往歴に20歳時に虫垂炎,同年に腸閉塞による手術既往を認めた.数年前より,左腹部腫瘤を自覚するも放置.便秘・嘔気・腹痛が出現してきたため,精査目的に入院となった.精査により腹部腫瘤は糞石であり,横行結腸-S状結腸の側々吻合により形成されたblind loop内に存在するものと診断した.糞石に対して,内視鏡的治療は困難であったため開腹手術を施行した.blind loopに起因する病態はblind loop syndrome(BLS)と定義され,様々な消化器症状を惹起するが,blind loop内に生じた糞石の報告は認められず稀と思われた.本症例では術前精査により癌の存在を否定しえたが,文献検索上blind loop内の発癌の報告もなされていた.高齢患者の便通異常症例の診療においては,blind loopの既往の有無も念頭に置くことが必要であると思われた.