2010 年 71 巻 10 号 p. 2656-2660
症例は妊娠16週の32歳,女性.下腹部痛で近医を受診し切迫早産の診断で入院した.子宮収縮抑制剤で治療されたが軽快せず,発症7日目に腸閉塞を疑われ当院へ緊急搬送された.腹膜刺激症状を認め,腹部・骨盤部造影CT検査で直腸S状部から上部直腸での腹腔内への腸管内容物の漏出とその周囲の腹腔内遊離ガス像・腹水を認め,直腸穿孔による急性汎発性腹膜炎と診断し緊急手術を施行した.腫大した子宮で穿孔部位の同定は困難であり,ドレナージ・横行結腸人工肛門造設術を施行した.同日破水し自然流産したが,術後46病日に退院した.本症例は妊娠中の便秘が直腸穿孔の原因であったと考えられた.妊婦の直腸穿孔はまれであり,若干の文献的考察を加え報告する.