2010 年 71 巻 10 号 p. 2672-2675
症例は85歳,女性.平成20年6月に肛門部痛,下腹部痛を主訴に当科を紹介受診された.受診時には明らかなイレウス症状は認められなかったが,下部消化管内視鏡検査で肛門縁より5cmの位置に腸管内腔に突出するI型の隆起性病変を認め,一部表面不整を認めた.また骨盤部CT検査にて直腸内腔に重積腸管を示すmultiple concentric ring signを認めた.以上の所見より腸重積を合併した早期直腸癌の診断のもと手術を施行した.開腹後重積腸管のen-block切除を試みたが困難であり,用手的解除を施行した.解除時に一部直腸壁の損傷を認めたためHartmann手術を施行した.
早期直腸癌に起因する腸重積症は稀であり,若干の文献的考察を加え報告する.