日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
TAEと待機的腫瘍切除術で治療した外傷性肝血管腫破裂の1例
中山 雄介田村 淳北口 和彦土井 隆一郎馬場 信雄小林 久人
著者情報
キーワード: 肝血管腫, 鈍的外傷, 破裂
ジャーナル フリー

2010 年 71 巻 10 号 p. 2687-2691

詳細
抄録

外傷性肝血管腫破裂に対しTAEにて止血後に切除した1例を経験したので報告する.患者は64歳,女性.2mの高さから転落して腰部を打撲し,当院に救急搬送された.来院時,血圧の低下を認めたが輸液により回復した.腹部CTで,右側腹部に血性腹水の貯留と肝外側区域に表面に突出する4cm大の血管腫を認め,その部位から造影剤の血管外漏出像が確認された.外傷性肝血管腫破裂と診断し,同日TAEを施行し止血を行った.TAE施行26日後に肝外側区域切除術を行い,血管腫を切除した.術後経過は良好で第13病日に退院した.肝血管腫破裂は死亡率が高く,TAEによる止血が成功した場合でも,再出血の危険性がある.またTAEの長期的な止血効果は不明である.肝血管腫破裂では,TAEにより血行動態を安定化させた後に,待機的な切除手術を考慮するという治療方針は合理的であると考えられた.

著者関連情報
© 2010 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top