2010 年 71 巻 10 号 p. 2692-2695
60歳,男性.上腹部痛を主訴に緊急入院した.左上腹部に圧痛を伴った小児頭大の腫瘤を触れ,精査で肝外側区域に接して造影効果の乏しい約20cmの腫瘤と肝S6に3cmの腫瘤,胆石・総胆管結石を認めた.既往に14年前の胃癌による胃切除術とアルコール性肝炎があった.巨大腫瘤は癒着のため横行結腸合併切除を加えて切離し,肝S6部分切除術,胆嚢摘出術,総胆管結石切石術を行った.術後病理では,外側区域の巨大腫瘤は縫合糸を含んだ異物性肉芽腫で,肝S6腫瘍は肝細胞癌と診断された.胃癌手術時に肝生検を行い,12カ月後のComputed tomography(CT)で肝に4cmの腫瘤が指摘されていたことが今回の手術後に判明した.肝生検に使用した縫合糸が原因で巨大な異物性肉芽腫を形成したものと思われた.