日本臨床外科学会雑誌
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症例
診断に難渋した右内腸骨動脈瘤の1例
三好 麻衣子坂尾 寿彦岩川 和秀勝原 和博北條 禎久
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2010 年 71 巻 11 号 p. 2820-2824

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抄録

症例は78歳,男性.2006年7月S状結腸癌に対し腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した.病理組織診断はtub1,pSM,pN0,ly0,v0,StageIであった.術前より両側内腸骨動脈瘤を指摘されていた.術後6カ月の腹部CT検査で,右内腸骨動脈瘤に接する骨盤腫瘤の拡大を指摘され,精査を行うも右内腸骨動脈瘤との関連がはっきりせず確定診断に至らなかった.経過中急速に拡大傾向を認めたため,既存の右内腸骨動脈瘤のsealed rupture(被覆穿孔)により発生した仮性動脈瘤と診断し手術を施行した.術中所見では仮性動脈瘤と診断し瘤縫縮術を施行した.病理組織診断では仮性瘤ではなく瘤の一部の拡大であった.孤立性腸骨動脈瘤は比較的稀で破裂の可能性が高く,また本症例では瘤が急速に拡大し非常に稀な仮性瘤も疑われ手術となった.CT血管造影で瘤は造影されず,S状結腸癌術後のリンパ節再発の可能性があり診断に苦慮した.

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