2010 年 71 巻 11 号 p. 2840-2845
症例は77歳,男性.早期直腸癌の診断で2008年5月ESDを他院で受けた.SM massive,垂直断端陽性のため追加手術目的に当院に紹介され,腹腔鏡下直腸低位前方切除術を施行された.術後経過は良好であったが,15PODに発熱が出現した.注腸検査で微小縫合不全を認め,胸腹部CTで膿瘍形成はなかったが,両側肺炎像および胸水貯留を認めた.微小縫合不全,術後肺炎の診断で抗生剤投与したが発熱は持続した.22PODのCTで吻合部周囲に変化はなかったが,右内腸骨静脈血栓と両側肺野に陰影を認め,右内腸骨静脈血栓性静脈炎からの敗血症性塞栓による肺化膿症と診断した.抗生剤を増量し,抗凝固剤の投与を開始した.その後も発熱は遷延したが,CTでは増悪は認めず,嫌気性菌を考慮した抗生剤投与により54PODに漸く解熱し,71PODに退院した.これまでに直腸癌術後微小縫合不全から内腸骨静脈血栓性静脈炎,肺化膿症を併発した症例の報告はなく,文献的考察を加え報告する.