日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
直腸癌術後に微小縫合不全が原因と思われる肺化膿症を併発した1例
松末 亮野村 明成升森 宏次川村 純一郎長山 聡坂井 義治
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 71 巻 11 号 p. 2840-2845

詳細
抄録

症例は77歳,男性.早期直腸癌の診断で2008年5月ESDを他院で受けた.SM massive,垂直断端陽性のため追加手術目的に当院に紹介され,腹腔鏡下直腸低位前方切除術を施行された.術後経過は良好であったが,15PODに発熱が出現した.注腸検査で微小縫合不全を認め,胸腹部CTで膿瘍形成はなかったが,両側肺炎像および胸水貯留を認めた.微小縫合不全,術後肺炎の診断で抗生剤投与したが発熱は持続した.22PODのCTで吻合部周囲に変化はなかったが,右内腸骨静脈血栓と両側肺野に陰影を認め,右内腸骨静脈血栓性静脈炎からの敗血症性塞栓による肺化膿症と診断した.抗生剤を増量し,抗凝固剤の投与を開始した.その後も発熱は遷延したが,CTでは増悪は認めず,嫌気性菌を考慮した抗生剤投与により54PODに漸く解熱し,71PODに退院した.これまでに直腸癌術後微小縫合不全から内腸骨静脈血栓性静脈炎,肺化膿症を併発した症例の報告はなく,文献的考察を加え報告する.

著者関連情報
© 2010 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top