日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
義歯誤飲6カ月後にS状結腸穿孔をきたした1例
石垣 和彦古元 克好藤 浩明森 友彦伊東 大輔小切 匡史
著者情報
キーワード: 義歯誤飲, 消化管異物, 穿孔
ジャーナル フリー

2010 年 71 巻 11 号 p. 2892-2895

詳細
抄録

症例は80歳,男性.嘔吐を主訴に近医受診.腸閉塞の診断で当院消化器内科に紹介され入院となったが,保存的加療で軽快しないため入院3日目に腹部CT検査を施行した.肝表面・下腹部にfree airを認め,S状結腸のhigh densityな物体と,これを中心とした小腸・結腸の壁肥厚がみられた.家人が6カ月前に義歯がなくなっていることに気付いていたが放置しており,同部位での義歯誤飲による腸管穿孔の診断で緊急手術施行した.穿孔部位はS状結腸の腸間膜対側で,穿孔部を含めたS状結腸を切除し,機能的端々吻合で再建した.経過は良好で術後22日目に退院した.高齢化社会を迎えるにあたり,本症例のように自覚なしに誤飲し,穿孔しても症状をうまく伝えられない患者が増えると考えられる.義歯誤飲後長期間を経た後にも腸管穿孔の原因となり得ることに留意すべきである.

著者関連情報
© 2010 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top