日本臨床外科学会雑誌
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症例
術前診断した痔瘻癌の1例
深瀬 正彦岩本 一亜手島 伸島村 弘宗斎藤 俊博武田 和憲鈴木 博義
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キーワード: 痔瘻癌, 粘液癌, MRI
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2010 年 71 巻 11 号 p. 2926-2931

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抄録

症例は60歳,男性.13年前より痔瘻の治療を受け炎症を繰り返していたが,約1カ月前から肛門周囲に硬結を触知し,切開排膿後も疼痛が持続しムチン様の排液を伴っていた.画像上,腸管に他の原発病巣は認めず,MRIのT2強調画像で直腸左側に顆粒状の高信号を呈する病巣が確認され,肛門陰窩に開口していた.また,生検による組織診では粘液中に印環細胞様の腫瘍細胞を少数認めたが,癌の確定診断には至らなかった.しかし,臨床所見等から痔瘻癌と診断し,直腸切断術を施行した.組織診断はmucinous adenocarcinoma,AI,ly0,v0,int,INFβであった.
痔瘻癌は肛門管近傍に発生する癌で術前に確定診断するのが困難な疾患である.今回,われわれは病理組織診でGroup4と診断されたが,臨床所見および特徴的なMRI画像所見から痔瘻癌と術前診断した1例を経験したので報告する.

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© 2010 日本臨床外科学会
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