日本臨床外科学会雑誌
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症例
膵リンパ管腫の1例
成本 壮一谷澤 豊坂東 悦郎川村 泰一寺島 雅典
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2010 年 71 巻 11 号 p. 2960-2964

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抄録

症例は58歳,女性.心窩部通を主訴に近医受診し,腹部超音波で腹腔内の嚢胞性腫瘤を指摘された.CTおよびMRI検査では膵周囲の多房性嚢胞性腫瘤として認められた.腹膜偽粘液腫などの悪性疾患と良性嚢胞性疾患との鑑別が困難であったため,診断目的に腫瘤切除術を施行した.腫瘤は膵被膜に覆われ,膵に連続していたが,膵実質とは剥離可能で,腫瘤切除術のみを施行した.組織では内皮に裏打ちされ拡張した脈管が集簇しており,間質には平滑筋線維とリンパ球を認めた.内皮細胞はCD31,D2-40陽性であった.以上より膵リンパ管腫と診断された.膵リンパ管腫は,一般的には膵嚢胞性疾患との鑑別が問題になるが,本例では,腫瘤が膵外性に発育していたため,腹膜偽粘液腫との鑑別が困難であった.術後28カ月現在無再発で経過している.貴重な症例と考え若干の文献的考察を加え報告する.

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© 2010 日本臨床外科学会
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