2010 年 71 巻 12 号 p. 3064-3069
乳癌放射線治療後の二次発癌として胸壁に発生した線維肉腫の症例を経験した.症例は44歳時に左乳癌で胸筋温存乳房切除術を受け,胸壁および領域リンパ節に放射線治療を施行され,前胸部の皮膚に強い放射線性皮膚炎を生じたが再発無く経過していた.55歳時,左胸筋間リンパ節領域に3cmの腫瘤が出現した.乳癌局所再発の診断で周囲組織を含めて切除したところ,病理診断は軟部組織より発生した線維肉腫であった.さらに2年後,前胸部に腫瘤出現し,胸骨肋骨を含めた胸壁切除,ゴアテックスシートおよび腹直筋皮弁による胸壁再建を行った.前回と同様の組織型であり,放射線照射野を発生母地に多発したことより放射線治療後二次発癌による病変であることが確診された.