2010 年 71 巻 12 号 p. 3140-3143
症例は37歳,女性.2日前から心窩部痛を自覚し,増悪したため来院.CT検査で回腸に限局した腸管壁の肥厚,腹水を認め,手術の方針となった.腹腔鏡下に観察したところ,血性腹水,回腸の限局した浮腫,漿膜面の発赤を認めたため,小開腹下に小腸部分切除術を施行した.病変部は著明な壁の浮腫と,粘膜面に多発する潰瘍,びらんを認めた.術後3日目,背面および両下肢に紫斑が出現.また,小腸の病理所見でleukocytoclastic vasculitisを認め,Schönlein-Henoch紫斑病と診断した.術後4日目よりステロイド内服を開始し,徐々に皮疹は軽快した.Schönlein-Henoch紫斑病は,急性腹症の鑑別すべき疾患の一つであるが,紫斑を伴わない場合,診断が難しく,手術を選択せざるを得ない場合がある.低侵襲な腹腔鏡下手術は,その特徴的な所見を把握しておくことで,診断に有用となる可能性がある.