2010 年 71 巻 12 号 p. 3158-3161
症例は,脳梗塞発症後胃瘻造設目的で当院に転院した84歳の男性.来院時MRSA腸炎を発症しており,前医よりVCM経管投与開始3日目であった.初診時腹部単純X線写真および超音波検査にて,上行~横行結腸にかけての腸管気腫と,腹腔内遊離ガス,さらに門脈内ガス像を認めた.ただし腹水は無く,理学所見および血液生化学所見から,消化管穿孔や腸管壊死は否定的であったため,MRSA腸炎に併発した病態と考え,TPN管理下に保存的に治療を行い,軽快した.本例は,その後MRSAによる菌血症,およびCVカテ感染も合併したが軽快.遊離ガスと腸管気腫の消退を待ち,PEGを施行し,転院となった.腹腔内遊離ガスを伴った腸管嚢腫様気腫症および門脈ガス血症は,近年報告例が増加しつつあるが,MRSA腸炎に併発した報告例は今回われわれが検索しえた範囲では見いだせなかったため,若干の考察を加え,報告する.