日本臨床外科学会雑誌
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症例
肝転移との鑑別が困難であったS状結腸癌併存肝膿瘍の1例
青柳 治彦樋口 哲郎吉村 哲規小林 宏寿有井 滋樹杉原 健一
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キーワード: 大腸癌, 肝膿瘍, 肝転移
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2010 年 71 巻 12 号 p. 3171-3176

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抄録

症例は76歳,男性.既往歴は糖尿病で内服治療中.現病歴では,便潜血陽性のため近医で下部消化管内視鏡検査を受けた.S状結腸癌の診断で,手術目的のため当科に入院した.CTとMRIにてS7,S8に中心部壊死を伴う肝腫瘤を認めた.以上より,肝転移を伴うS状結腸癌と診断した.腹腔鏡補助下S状結腸切除術,肝後区域・尾状葉切除術,S8部分切除術を施行した.病理組織学的所見では,S状結腸癌は1型の高分化腺癌で,肝腫瘤には悪性所見はなく,炎症性病変であった.
近年大腸癌の増加に伴い,大腸癌に合併した肝膿瘍の報告が散見される.肝転移との鑑別が困難なことが多く,また肝膿瘍の原因には大腸癌肝転移の感染もあげられる.今回われわれは術前診断で肝転移を否定できない肝膿瘍に対し,大腸癌原発巣切除と同時に肝切除術を施行した症例を経験した.大腸癌に合併した肝膿瘍は治療方針も諸家により異なっており,若干の文献的考察を加えて報告する.

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© 2010 日本臨床外科学会
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