日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
肝嚢胞のため診断が困難であった98歳胆嚢捻転症の1例
南部 弘太郎渋谷 哲男塩谷 猛渡邉 善正野村 聡山田 太郎
著者情報
キーワード: 胆嚢捻転症, 肝嚢胞
ジャーナル フリー

2010 年 71 巻 4 号 p. 1008-1012

詳細
抄録

症例は98歳,女性.腹痛と嘔吐を認め,イレウスの診断で当院紹介となる.腹部全体に圧痛を認めたが,筋性防御はなかった.血液検査ではWBCが10,500/ul,CRPが26mg/dlと高値であった.腹部CTは腸管の拡張とニボー,肝腎嚢胞を認めた.CT,腹部所見から絞扼性イレウスの所見はなく,98歳という超高齢者でもあり経過観察とした.翌日ショック状態となったが,昇圧剤とアルブミン投与により状態が改善し絞扼性イレウスの疑いで開腹手術を行った.手術所見では,腸管の拡張は軽度であったが,胆嚢は捻転し右腎臓外側に陥入し壊死になっていた.壊死胆嚢を摘出し手術を終了した.術前CTで胆嚢と思われた部位は肝嚢胞であり,拡張した腸管と思われたものは捻転した胆嚢であった.胆嚢捻転症は比較的稀な疾患であるが,肝嚢胞と麻痺性イレウスを認める症例は胆嚢との鑑別に注意が必要である.98歳の胆嚢捻転症の報告は,本邦最高齢であり,若干の文献的考察を加え報告する.

著者関連情報
© 2010 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top