2010 年 71 巻 4 号 p. 937-940
症例は63歳,男性.2週間ほど持続する胃部不快感と嘔気・嘔吐の精査で行った上部消化管内視鏡検査で十二指腸狭窄を指摘された.数回の生検で悪性所見が認められず良性狭窄として保存的治療を行ったが改善なく,手術を行った.術中病理検査で十二指腸癌の診断となり,膵頭十二指腸切除術を施行した.術後は副作用出現までの短期間ではあったが,胃癌に準じたS-1内服による補助化学療法を行い,16カ月経過した現在無再発経過中である.原発性十二指腸癌は他の消化器癌と同様に手術的治療が第一選択となるが,病巣の局在によりその術式は異なる.また稀な疾患であるため補助化学療法や切除不能例に対する姑息的治療に関する指針は確立しておらず,今後の研究が必要と考えられた.