日本臨床外科学会雑誌
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症例
医療用手袋の摂食により腸閉塞をきたした1例
小林 敦夫関戸 仁松田 悟郎一万田 充洋高橋 俊毅椎名 丈城遠藤 格
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2010 年 71 巻 4 号 p. 941-945

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抄録

症例は28歳,女性.統合失調症のため長期入院中.腹部手術歴なし.腹痛が出現し,腹部X線検査で拡張した小腸ガスと鏡面形成像を認め,当院紹介となった.CTにて小腸内に4×6×3.5cm大の内部不均一な物体を認め,閉塞起点と考えられた.詳細な病歴聴取から日常的な異食が判明し,嚥下異物による小腸閉塞と診断した.来院時には腹部症状が消失しており,自然排出の可能性も考慮して経過観察としたが,入院翌日イレウス症状が増悪したため緊急手術を施行した.回盲部より約30cmの回腸内に異物を触知し,小腸切開して異物を摘出した.異物は医療用手袋で硬く変性していた.術後経過は良好で術後26病日,転院となった.精神疾患を有する患者のイレウスでは異物による腸閉塞を念頭に置くべきである.本症例は詳細な病歴聴取から異食の既往が明らかとなった.異物の存在診断にはmultidetector-row CT(MDCT)が有用であった.

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© 2010 日本臨床外科学会
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