日本臨床外科学会雑誌
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症例
限局性悪性胸膜中皮腫の1例
家里 明日美藏井 誠境澤 隆夫椎名 隆之近藤 竜一吉田 和夫佐野 健二
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2010 年 71 巻 5 号 p. 1159-1164

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抄録

症例は79歳,女性.喫煙歴およびアスベスト曝露歴はない.
2008年1月より労作時呼吸困難が出現し,胸部単純X線にて右上肺野に腫瘤影を指摘された.胸部CTおよびMRIでは,胸壁に広範に接する8cm大の腫瘤と右胸水貯留を認めた.腫瘤のCTガイド下生検にて悪性胸膜中皮腫と診断された.手術は胸腔鏡補助下で施行した.腫瘤は手拳大,表面平滑で,壁側胸膜と線維性に癒着していた.また右肺上葉臓側胸膜から腫瘤へ連続する索状物を認めた.腫瘤癒着部の壁側胸膜を含めた腫瘍摘出術を施行した.病理組織学的には腫瘍は核小体明瞭な核と好酸性胞体を持つ異型細胞の増殖を認め,免疫染色ではCK5/6,calretinin,D2-40陽性で上皮型悪性胸膜中皮腫と診断された.合併切除した壁側胸膜に腫瘍浸潤を認めず,臓側胸膜発生の限局性悪性胸膜中皮腫と診断した.限局性胸壁腫瘤を見た時には,本疾患を念頭に置くべきと考える.

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© 2010 日本臨床外科学会
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