2010 年 71 巻 5 号 p. 1222-1226
症例は78歳,男性.胆管癌に対し幽門温存膵頭十二指腸切除術術後1年6カ月,下腹部痛を訴え,気尿も認めたために,当科入院した.CT検査で,膀胱内に膵胃吻合部に留置した膵管ロストチューブの迷入,および注腸検査でS状結腸膀胱瘻を認め,経尿道的に膵管ロストチューブを除去した.しかし,その後気尿が再燃したために,開腹S状結腸膀胱瘻閉鎖術を施行した.本症例はS状結腸憩室症を合併しており,憩室を経由してロストチューブが膀胱に穿通したものと推測された.一般にロストチューブは自然脱落したあと経肛門的に排出されるが,本症例のように腸管外に迷入する可能性もあることを念頭に置き,経過観察すべきと思われた.