2010 年 71 巻 5 号 p. 1227-1231
症例は58歳,男性.下血を主訴に近医受診しS状結腸癌の診断にて開腹術施行するも広範な膀胱浸潤を認め根治術は困難と判断され試験開腹となった.その後,当院外科へ紹介となり泌尿器科による膀胱浸潤の評価では膀胱全摘が必要と診断された.術前化学療法としてmFOLFOX6を計6サイクル施行したところ,CT検査にて腫瘍径は33%の縮小が認められ,また膀胱鏡検査では粘膜面は正常化していた.S状結腸癌(SI:膀胱)の術前診断にてS状結腸切除術を施行し,膀胱筋層までを可及的に切除した.摘出標本の病理組織学的診断では膀胱壁に悪性細胞を認めず,tub2,pSS,pN0,cH0,cP0,cM0,StageIIであった.膀胱浸潤を認める原発巣に対する術前化学療法により膀胱温存術が可能となり患者のQOLの低下を防止できた.