日本臨床外科学会雑誌
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症例
悪性度の診断に苦慮した膵外病変を伴う非機能性膵内分泌腫瘍の1例
信太 昭子柳原 正智芦澤 敏鈴木 敬二高橋 毅桑尾 定仁
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2010 年 71 巻 5 号 p. 1287-1293

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抄録

腹部外傷が原因と考えられる膵外病変のために悪性度診断に苦慮した非機能性膵内分泌腫瘍の1例について報告する.症例は42歳,女性.学童期に2度の腹部外傷歴がある.健診を機に膵尾部の石灰化腫瘤を指摘された.精査の結果,尾側主膵管の途絶,腹腔内結節性病変,胃浸潤を疑う所見,脾静脈閉塞などの所見が得られたため,腹膜播種を伴う膵悪性腫瘍を疑って脾合併膵体尾部切除兼胃壁部分切除を行った.病理組織学的検査では,結節性病変は腫瘍からの散布病変であり,腫瘍は非機能性膵内分泌腫瘍で,膨張性発育を示し,核分裂像はみられず,胃浸潤やリンパ節転移もないことから,WHO分類の境界病変群・高分化型腫瘍に該当すると診断された.結節性病変が播種であれば内分泌細胞癌の診断となるが,本症例では外傷による膵外散布病変の可能性が高いと考えられた.

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© 2010 日本臨床外科学会
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