日本臨床外科学会雑誌
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症例
膵管内乳頭粘液性腫瘍非浸潤癌術後5年の残膵癌に対する残膵全摘の1例
岡屋 智久山森 秀夫山本 和夫林 伸一鈴木 弘文菅野 勇
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2010 年 71 巻 5 号 p. 1294-1298

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抄録

症例は74歳,男性.平成15年2月,膵頭部の膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の診断で幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術中迅速病理診断で膵離断面に異型は認めなかった.永久標本での病理診断はIPMN非浸潤癌で,膵離断面は主膵管に異型はなかったが分枝膵管に中等度異型を認めた.平成20年4月,血清CEA,CA19-9値が初めて高値を呈し,同年6月に血清CA19-9値はさらに上昇した.同年7月腹部CTで膵空腸吻合部から膵体部に腫瘍を認めた.残膵癌と診断し同年8月,手術を施行,膵空腸吻合部から膵体部に周囲への浸潤を伴う腫瘍を認め胃全摘併施残膵全摘,横行結腸間膜部分切除術を施行した.術後病理診断はIPMNおよび浸潤癌であった.IPMNの膵離断線決定には離断面の術中迅速病理診断は重要であるが困難例もあり注意を要する.離断面のIPMN遺残症例では癌再発の危険があり長期の厳重な経過観察が肝要である.

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© 2010 日本臨床外科学会
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