日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
乳癌術後23年を経た初回再発が,トルコ鞍部髄膜孤立性転移であった1例
宮本 健志木村 正幸福長 徹菅本 祐司久保嶋 麻里今西 俊介
著者情報
キーワード: 乳癌, 髄膜転移
ジャーナル フリー

2010 年 71 巻 6 号 p. 1423-1428

詳細
抄録

症例は69歳,女性.2006年9月より視野欠損が生じ,MRIにてトルコ鞍部の髄膜腫を強く疑う診断となった.当院脳外科にて開頭腫瘍摘出をした結果,23年前の乳癌のトルコ鞍部への転移であることが判明した.これが初回再発であり,他臓器への転移は認めなかった.追加治療としてアロマターゼ阻害薬の投与を行ったが,トルコ鞍への照射は実施しなかった.腫瘍は局所再発をきたし,症候性てんかんを招いた.2008年4月に誤嚥による窒息で死亡した.病理解剖の結果,転移はトルコ鞍部にほぼ限局し,播種性転移や骨転移からの波及でなく,髄膜への直接生着であった可能性が高いと診断された.乳癌の髄膜転移のうち,播種性でなく,孤立性に結節を形成したものの報告は些少で,晩期の再発であったことも診断を困難とさせる一因であった.文献的考察とともに報告する.

著者関連情報
© 2010 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top