2010 年 71 巻 7 号 p. 1743-1747
症例は70歳代,女性.十二指腸乳頭部癌に対して幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織診断は,tubular adenocarcinoma,moderately differentiated,AbpBi,H0,pPanc0,pDu2,P0,pN1(+)(13bのみ),M(-),St(-),pT3,stage IIIであった.術後外来にて経過観察中,手術の2年後の胸部CT検査にて右肺S2に2cm大の孤立性異常陰影を認めた.気管支鏡検査による細胞診はclass IIであったが,FDG-PET検査にて有意な異常集積を認めた.腹部CT検査,頭部CT検査および骨シンチ検査上異常所見は認められなかった.以上より,原発性肺癌を疑って右肺上葉切除術を施行した.切除標本の肺胞腔内への上皮増殖,2次腺腔形成等の病理組織所見および免疫染色にて十二指腸乳頭部癌の肺転移と診断された.十二指腸乳頭部癌の術後再発形式として,局所再発およびリンパ節,肝,肺転移等が挙げられる.しかしながら孤立性に肺転移が認められ,肺切除を施行された症例は稀であり,文献的考察を加えて報告する.