2010 年 71 巻 7 号 p. 1855-1859
患者は67歳,男性.平成21年4月頃より心窩部痛を自覚し,6月に近医受診したところ膵酵素の上昇と膵尾部に径30mm大の嚢胞を指摘.8月に径160mm大まで増大してきたため,精査・加療目的にて当院消化器内科へ紹介となった.腹部造影CT検査にて,膵体尾部に16×5×9cm大,辺縁が濃染される仮性嚢胞がみられた.さらにその頭部側には限局した膵腫大を認め,造影膵実質相で造影不良,後期相で淡い濃染状態であり,EUS-FNAにて膵体部癌の診断に至った.9月末の予定開腹時はすでに嚢胞は消失していたが,腹水や遠隔転移を認めず,膵体尾脾切除術を施行した.膵癌による膵管狭窄が嚢胞の進展ひいては破裂につながったものと推察された.