2010 年 71 巻 7 号 p. 1866-1869
症例は76歳,女性,整形外科入院中であった.平成21年2月に頸椎症の手術を受け,連日消炎鎮痛剤を使用していた.また,関節リウマチのためプレドニゾロン2mg/日を長期内服していた.同年3月下旬より発熱が出現し,抗生物質の投与で解熱せず,関節リウマチ増悪の診断でステロイド増量となっていた.発熱から3週間後,突然の下腹部痛にて外科紹介となった.腹膜刺激症状を呈し,CTで遊離ガスと腹水を認め,消化管穿孔を疑い緊急手術を施行した.消化管には穿孔を認めず,腫大した子宮の底部が壊死をきたして穿孔し,膿の流出を認めた.子宮留膿腫穿孔による汎発性腹膜炎と診断し,開腹洗浄ドレナージ,および経腹的子宮ドレナージを施行した.術後経過は良好であった.子宮細胞診はclassIで,膿培養からBacteroides fragilisが検出された.高齢女性の腹膜炎の鑑別診断にあたっては本症も念頭に置く必要があり,また全身状態を十分に考慮した上で術式を選択することが重要である.