日本臨床外科学会雑誌
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症例
右乳癌術後に乳糜漏をきたし,保存的に加療した1例
江本 慎高橋 將人細田 充主高橋 弘昌藤堂 省
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キーワード: 乳癌, 乳糜漏, 保存的治療
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2010 年 71 巻 8 号 p. 1959-1964

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抄録

右乳癌の術後乳糜漏は非常に稀である.今回われわれは保存的に加療しえた本症の1例を経験した.43歳女性.2009年1月乳癌検診にて右乳房に異常を指摘され来院.右乳房CD領域に腫瘤を認め,マンモトーム®生検にて浸潤性乳管癌と確定診断され,エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体ともに陽性,human epithelial growth factor recetptor type2は陰性であった.術前化学療法を施行し,8月に内視鏡下右胸筋温存乳房切除術+腋窩郭清(LevelI+II)を施行した.術後,乳糜漏を認めず,術後8日目(post operative day 8,POD8)に退院となった.POD13の初回外来にて皮弁下穿刺で乳糜を認め,POD20に入院.POD28にドレーンを再留置し,POD36に食事を再開.徐々に脂肪制限を緩和したところ,POD48にドレーン排液が再び乳糜となったため,絶食とした.POD62に排液量は著明に減少し,POD64にドレーンを抜去した.乳癌術後の乳糜漏で,ドレーン排液量が少量な場合,保存的加療が可能であると考えられた.

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© 2010 日本臨床外科学会
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