日本臨床外科学会雑誌
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症例
転移巣切除によって症状が緩和された非小細胞肺癌小腸転移の1例
大谷 裕岡 伸一倉吉 和夫河野 菊弘吉岡 宏金山 博友
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2010 年 71 巻 9 号 p. 2310-2315

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抄録

症例は78歳,男性.2008年3月,検診にて胸部異常陰影を指摘され,喀痰細胞診にて肺癌と診断された.画像上大動脈弓への浸潤が強く疑われ,cStage IIIBの非小細胞肺癌と診断された.腎機能が低下していたため,platinum baseの化学療法施行が見合わされ,9月より放射線療法が開始された.治療中(44Gy照射終了時)に下痢,下血が出現し,原因精査目的で下部消化管内視鏡検査が施行された.回腸終末部に凝結塊を有す隆起性病変を指摘され,この病変よりの出血と診断され,同時に生検も行われたが確定診断されなかった.11月上旬,消化管病変の精査目的で当科へ紹介され,再度下部消化管内視鏡下に生検を行ったが確定診断には至らなかった.その後急激に腸閉塞症状を来たし,病変からの出血による貧血も増悪したため,症状緩和目的で病変切除を実施した.呼吸機能が悪く,腰椎+硬膜外麻酔下に開腹術を施行した.術後は早期から経口摂取が可能となり,貧血状態も改善した.切除標本の病理組織学的検査にて,肺低分化型腺癌の小腸転移と確定診断された.一般に肺癌の小腸転移はまれであり,中では低分化腺癌や大細胞癌の転移が多いとされる.予後不良で肺癌の末期状態であるが,まれに病変切除により症状緩和につながる例も経験する.小腸転移巣に対する外科治療に対しては当該各科との話し合いの下で,その適応について十分に検討されなければならないと思われた.

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