2010 年 71 巻 9 号 p. 2364-2368
症例は22歳,女性.小児期より間歇的腹痛発作を繰り返していた.平成21年12月これまでと同様の腹痛が出現し,嘔吐,血便も認め,当科紹介受診.腹部単純CTにて腸重積症と診断し,同日緊急手術を施行した.開腹したところ,Treitz靱帯近傍から左側の骨盤内に至るまで,著明に拡張した空腸を認め,空腸空腸型の腸重積であった.Hutchinson手技で重積を整復したところ,Treitz靱帯から15cm肛門側の空腸に直径6cmの軟らかな腫瘤を認め,これが先進部となっていた.腫瘤を含めて空腸を15cm切除した.病理診断の結果は,異所性胃粘膜であり悪性所見はなかった.
腸重積症は小児に好発し,成人に発症することは稀であるが,成人発症例では器質的原因のあることが多い.本症例は手術時は成人であったが,小児期から異所性胃粘膜が存在して同部を起点に腸重積状態を繰り返していたものと考えられた.繰り返す腹痛発作の一因として腸重積も考慮すべきと考えられた.