日本臨床外科学会雑誌
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症例
心肺蘇生術による産婦の肝損傷の1例
松川 啓義塩崎 滋弘高倉 範尚藤原 康宏大野 聡二宮 基樹
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キーワード: 心肺蘇生術, 肝損傷, 産婦
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2010 年 71 巻 9 号 p. 2402-2405

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抄録

症例は31歳,産婦.出産直後に痙攣をきたし,呼吸停止,ショック状態となり心肺蘇生術を施行され救急搬送された.蘇生術にて意識・呼吸は回復した.精査にて羊水塞栓症と診断され,著明な凝固障害を認め産科的DICを合併していた.羊水塞栓症の治療が行われていたところ,腹腔内出血が出現増強し,腹部CTで肝外側区域表面から造影剤の腹腔内漏出があり,肝損傷に対して緊急手術を施行した.広汎な肝被膜下血腫の形成あり,被膜の破裂部位から腹腔内に出血をきたしていた.肝鎌状間膜付着部に肝実質の挫滅と湧出性出血があり,最初の肝損傷部位と推定された.止血術後に羊水塞栓症も軽快し術後12日軽快退院した.妊産婦の軟弱な肝は鈍的外力により損傷を受けやすく,また産科的DICの状態では出血が重篤化しやすい.救命上不可欠な心肺蘇生術により肝損傷をきたす可能性があり,蘇生後併発症および肝損傷の特殊な原因の一つとして念頭に置く必要がある.

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© 2010 日本臨床外科学会
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