日本臨床外科学会雑誌
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症例
乳房内に腫瘤を形成した巨細胞性動脈炎の1例
玉田 修吾相良 安昭馬場 信一松山 義人雷 哲明大井 恭代
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2011 年 72 巻 1 号 p. 10-14

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抄録

左乳房に腫瘤を形成,画像診断で乳癌を否定できず組織生検を施行,巨細胞性動脈炎Giant cell arteritis(GCA)の診断に至った症例を経験した.症例は74歳,女性.左乳房に圧痛を伴う腫瘤を触れ来院した.マンモグラフィはspiculaを伴う構築の乱れ,超音波では高輝度spotを伴う11×10mmの不整形低エコー病変として描出された.細胞診では細胞変性が強く検体不適正であった.乳癌を否定できず摘出生検を行った.病理組織所見では病変内動脈において内弾性板を中心に肉芽腫性炎症と著しい内膜肥厚を認めた.異物巨細胞が弾性線維を貪食する所見も認めGCAの診断となった.GCAは側頭動脈炎と呼ばれ側頭動脈以外の病変は少ない.さらに乳房内に病変を形成したGCAは稀であり,乳癌との鑑別が問題となることもある.一般に生命予後は良好であるが,全身疾患の部分症状である場合もあり,診療の際には注意が必要である.

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