2011 年 72 巻 1 号 p. 136-141
症例は68歳,男性.膵臓癌にて膵頭十二指腸切除術後経過観察中にCTで肝腫瘤を指摘,増大傾向を認めたため精査加療目的に入院となった.理学所見上,心窩部に鶏卵大の腫瘤を触知し,同部に圧痛を認めた.血液検査ではCRPの上昇を認めた.腹部USでは境界不明瞭な腫瘤として描出され,内部は不均一であった.腹部CTで肝左葉に境界不明瞭な不整形の腫瘤を認め,3カ月間で大きさは4cmから8cmへ増大した.造影すると辺縁が優位に不均一に造影された.MRIではT1強調像で低信号,T2強調像で腫瘍の周囲が高信号を呈していた.また,腹壁に浸潤している像を示していた.以上より,炎症性腫瘍を考えたが,悪性疾患を否定できず開腹手術を施行した.腫瘍の生検を施行したところ好中球浸潤を伴う肉芽組織を認め,一部に菌塊を伴っていた.細菌培養検査でActinomycesの発育を認め,肝放線菌症と診断した.肝原発の放線菌症はまれであり,若干の文献的考察を加え報告する.