日本臨床外科学会雑誌
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症例
肝細胞癌との鑑別に苦慮した限局性結節性過形成の1例
中田 泰幸吉富 秀幸大塚 将之三浦 世樹木村 文夫宮崎 勝
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2011 年 72 巻 1 号 p. 142-148

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抄録

肝限局性結節性過形成(以下,FNH)は,過形成変化による非腫瘍性病変であるが,悪性腫瘍との鑑別が難しいことがある.今回,原発性肝癌との鑑別が困難であった巨大FNHの1切除例を経験したので報告する.症例は31歳,女性.上腹部痛,全身倦怠感を主訴に前医受診,肝の巨大腫瘤を指摘され当科紹介.右肋弓下に1横指,肝を触知.血液検査では,感染症認めず,PIVKAIIが66mAU/mlと軽度上昇を認めた.Dynamic CTでは動脈相で内部に放射状の低吸収域を持つ,肝内側,前区域を占める強く造影される15cm大の境界明瞭な腫瘤を認めた.血管造影検査では,同領域にA4/A8から血流を受ける濃染像を認めた.以上より,FNHを疑ったが,腫瘤部にはSPIO-MRIでのSPIOの取り込み,肝シンチグラフィ(Tc-99m)でのTcの取り込みを共に認めなかったため,原発性肝癌を否定できず,肝中央2区域切除術を施行した.病理検査では,腫瘤は索状構造の乱れのみを認める正常肝細胞で占められており,内部に筋性血管の介在を伴う繊維性の中心瘢痕を認め,FNHと診断した.FNHは局所的な血流増加に対する非特異的な過形成反応であり,診断がつけば経過観察でよいとされるが,巨大なものでは診断が困難な場合があり,今回の症例のように悪性を否定できないもの,上腹部痛などの有症状のあるものには外科切除が適応になると考えられた.

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