日本臨床外科学会雑誌
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症例
直腸癌に対する低位前方切除術々後縫合不全から鼠径管を介しFournier壊疽に至った1例
黄 泰平安政 啓吾藤川 正博
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2011 年 72 巻 1 号 p. 168-171

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抄録

Fournier壊疽は皮膚,尿道,直腸肛門周囲から起因菌が陰嚢皮下に達し,陰部動脈の閉塞性動脈炎を起こし,急速な壊疽をもたらす予後不良の感染症である.今回,低位前方切除術々後縫合不全から鼠径管を介しFournier壊疽を発症したが,救命しえた1例を経験した.症例:60歳,男性,手術歴:左陰嚢水腫.進行直腸癌に対して2008年6月に低位前方切除術施行.術後ドレーン排液の汚染は認めず,術後7日目に陰嚢の腫脹,疼痛を認めた.翌日には陰嚢皮膚の壊疽を認め,CTにて陰嚢内および左鼠径部から側腹部に気腫像を伴いFournier壊疽と診断した.緊急広範デブリドレナージ,両側精巣摘除,横行結腸人工肛門造設術を施行した.術後6日目に人工呼吸器離脱.術後52日目に植皮術を行い,治癒し退院した.本症例はドレーンが有効でなく,縫合不全の膿汁が完全には癒合していない腹膜鞘状突起から左鼠径管に入り,Fournier壊疽に至ったと考えられた.

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