日本臨床外科学会雑誌
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症例
膵嚢胞空腸吻合によって膵切除を回避した膵損傷の1例
大和田 洋平小田 竜也福永 潔佐々木 亮孝大河内 信弘
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2011 年 72 巻 10 号 p. 2616-2622

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抄録

健常な14歳男児が突然の上腹部痛を主訴に受診した.血清アミラーゼが異常高値で,腹部造影CTを施行すると膵実質は膵体部で断裂し後腹膜腔に液体貯留を認めたため膵損傷を疑った.外傷機転が明確でなかったため,まず急性膵炎に対する保存的治療を行ったが症状改善せず,入院後26日目に開腹ドレナージ術を施行した.一時的に症状は改善したが再増悪したため45日目に再手術を施行した.予定術式としては膵体尾部切除が確実と考えたが機能温存に配慮し膵切除を行わない術式を検討した.膵断裂部に存在した膵内嚢胞に尾側の主膵管を開放し嚢胞を覆うように空腸吻合を行った.主膵管に留置したドレナージチューブは嚢胞と挙上空腸を介して一時的に外瘻とした.術後合併症を認めず再手術後16日目に退院し再手術後48日目に外来で外瘻チューブを抜去した.膵損傷に対して膵嚢胞を利用することで膵臓を切除せず救命と膵機能温存を達成しえたので報告する.

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