日本臨床外科学会雑誌
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症例
CT,MRIによる立体構築画像が有用であった膵管内乳頭粘液性腫瘍の1例
柴崎 泰坂口 孝宣稲葉 圭介福本 和彦鈴木 昌八今野 弘之
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2011 年 72 巻 10 号 p. 2632-2638

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抄録

症例は68歳,女性.2010年4月近医で膵管拡張と膵嚢胞性病変を指摘され当院紹介受診となった.検査の結果,膵体部混合型膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm,以下IPMN)と診断した.最大径2cmで嚢胞内に明らかな結節隆起を認めず,膵液細胞診は陰性であったが,増大傾向がある混合型のため,切除の方針とした.当初は膵頭十二指腸切除術を考慮したが,総肝動脈が欠損し,SMAから分岐して膵頭部腹側を頭側へ走行するGDAに連なる動脈が肝全体を動脈供血する変異が術前3DCTにて確認されたため,SMV右縁から左胃静脈の脾静脈流入部までの膵中央切除を施行した.摘出標本には明らかな悪性像は認めず,拡張嚢胞上皮の腺腫成分のみで,膵管断端は正常であった.血管,膵実質,膵管を重ねた立体構築画像は安全で確実な手術を遂行するのに有用であった.

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© 2011 日本臨床外科学会
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