日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
術前診断したS状結腸間膜窩ヘルニアの1例
矢澤 武史清水 智治目片 英治園田 寛道龍田 健谷 徹
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 72 巻 10 号 p. 2676-2680

詳細
抄録

われわれは術前診断し良好な経過を得たS状結腸間膜窩ヘルニアの1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は51歳男性.深夜から間欠的左下腹部痛を認め,当院救急外来を受診した.腹部造影CTにてS状結腸間膜内に小腸が嵌入しており,S状結腸間膜に関連した内ヘルニアと診断し緊急手術を行った.腹腔内に少量の腹水を認めたが,虫垂切除後の癒着は認めなかった.S状結腸間膜と後腹膜の癒合部に同部に回腸末端から190cmの回腸が約10cmにわたり嵌入していた.用手的に嵌入していた回腸を整復しS状結腸間膜窩ヘルニアと診断した.回腸の色調は良好で腸管切除は行わなかった.1.5cmのS状結腸間膜の欠損部は縫合閉鎖し手術を終了した.術後経過は良好で術後8日目で退院となった.腸閉塞の原因としてS状結腸間膜窩ヘルニアは比較的まれであるが,腹部CTによる早期診断・手術により腸管切除を回避できると考えられた.

著者関連情報
© 2011 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top