2011 年 72 巻 10 号 p. 2713-2717
症例は57歳,女性.左下腹部腫瘤を主訴に来院.鼠径靱帯近傍の左下腹部に4.5cm大の硬い腫瘤を触知し,針生検で顆粒細胞腫と診断した.腫瘤は増大傾向にあったため摘出手術を施行した.腫瘤は外腹斜筋内に発生しており,境界は明瞭で一括切除可能であった.病理組織学的には腫瘍細胞の紡錘形化と核の多形化が認められ異型顆粒細胞腫と診断した.組織学的にも断端は陰性であったが,術後10カ月目より左鼠径部に腫瘤が出現.左恥骨前面に2cm大,左上前腸骨棘内側に5cm大の腫瘤を認めた.初回切除部の近傍であり,局所再発の診断で再度切除術を行った.再発腫瘍の病理組織像も初回同様に異型顆粒細胞腫であった.以後再発はみられていない.外腹斜筋内に発生し興味深い経過を示した顆粒細胞腫症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.