日本臨床外科学会雑誌
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症例
鼠径ヘルニア偽還納の1例
小島 正継清水 智治張 弘富村田 聡阿部 元谷 徹
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2011 年 72 巻 10 号 p. 2723-2729

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抄録

症例は69歳,男性.数年前より,左鼠径ヘルニアの脱出と自己還納を繰り返していた.3日前にも同ヘルニア脱出を認め自己還納を行った.その後,上腹部痛,嘔気・嘔吐が出現し当院を受診した.腹部X線写真で小腸が拡張しニボーを形成しており,CTで左下腹部に閉塞起点を認めた.イレウスと診断し,イレウス管を挿入,症状は軽快するも通過障害は残存したため開腹術を施行した.内鼠径輪の近傍,腹膜前腔に壁側腹膜に包まれるように小腸ループが嵌頓しており,鼠径ヘルニア偽還納と診断した.嵌頓を解除したが,腸管血流は良好であり腸切除は要しなかった.Direct Kugel Patch®を用いて鼠径ヘルニアを修復した.鼠径ヘルニアの偽還納は腸管が嵌頓した状態でヘルニア嚢と一緒に腹膜前腔に戻る稀な疾患であり,嵌頓は残存しているため早期の手術が必要である.鼠径ヘルニア整復後もイレウスが続く場合には偽還納を考慮する必要があると考える.

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