日本臨床外科学会雑誌
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原著
乳癌術前化学療法における組織学的効果と相関する因子の検討
三浦 弘善伊藤 良則宮城 由美岩瀬 拓士堀井 理絵秋山 太齊藤 光江
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2011 年 72 巻 11 号 p. 2759-2766

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抄録

(目的)原発性乳癌術前化学療法施行例の治療開始前生検標本におけるバイオマーカー(組織型,ホルモンレセプター,HER2,核異型度)と,切除標本における組織学的効果との関連を検討する.(方法)対象は2005年3月から2007年7月までに当院で術前化学療法を施行後,手術を行った原発性乳癌254例.組織学的治療効果と年齢,腫瘍径,組織型,ホルモンレセプター(HR),HER2,核異型度等の関連を検討した.(結果)254例中Grade2以上の組織学的効果が85例(33.5%)で認められた.組織型別奏効率は,乳頭腺管癌19.2%,充実腺管癌42.2%,硬癌31.8%であった.HR陽性群では22.5%,陰性群では59.2%であり,陰性群で有意に高い奏効率が認められた.核異型度別奏効率はグレード1:23.0%,2:27.1%,3:58.0%と,核異型度が高度の症例で高い奏効率が認められた.(結論)乳頭腺管癌で術前化学療法の奏効率が低かった.HR陰性,HER2陽性,核異型度3の症例で高い組織学的効果が認められた.レジメン別奏効率では,アンスラサイクリン投与にタキサンを順次投与した群で有意に高かったが,HR陰性,HER2陽性症例では追加効果を認めなかった.

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