2011 年 72 巻 11 号 p. 2817-2821
症例は77歳,男性.14年前に気管腺様嚢胞癌に対し気管管状切除術を施行,術後局所再発予防目的に計60Gyの放射線治療が行われた.術後6年目,8年目に転移性肺腫瘍を認め肺部分切除術が施行された.初回手術より14年後に多発する転移性肝腫瘍が指摘され,肝拡大後区域切除術+ラジオ波焼灼術を施行,4年の無再発生存期間が得られた.現在新たに右腎転移を認めており切除を最優先として治療方針を検討中である.気管腺様嚢胞癌の遠隔転移に対する切除例の報告は少なく,なかでも肝転移切除症例の報告は1例のみときわめてまれである.気管腺様嚢胞癌は長い経過で遠隔転移をきたす特徴があるが,再発巣に対する積極的外科的切除により長期生存も可能であると思われ,今回報告した.