2011 年 72 巻 11 号 p. 2894-2898
症例は60歳,男性.腹痛の精査目的のCTで,肝尾状葉に腫瘍を認めた.さらに検査を行ったが確定診断を得られず,2008年11月に診断目的を兼ねた手術を施行した.腫瘍の一部を採取して術中迅速病理診断に提出すると,リンパ球浸潤を伴う組織であり,癌ではないとの結果を得た.尾状葉部分切除を施行して提出すると,悪性リンパ腫との結果を得た.周囲への強固な浸潤があり,完全切除には下大静脈部分合併切除が必要である可能性が考えられた.腫瘍は残存していたが,完全切除は過大侵襲であり,化学療法による全身治療が妥当であると判断し,手術を終了した.術後経過は良好であり,血液内科へ転科となった.Malignant lymphoma,diffuse large cell type,B cell typeの診断でR-CHOPを8コース施行し,完全寛解を得た.術後24カ月の時点で,無再発生存中である.文献的考察を加え,本症例を報告する.