2011 年 72 巻 11 号 p. 2914-2918
48歳男性,アルコール性慢性膵炎の経過中,背部痛が出現し来院した.胆石症で胆嚢摘出術の既往歴あり.血液生化学検査で,血清アミラーゼおよびCRPの上昇を認めた.腹部CT検査上,慢性膵炎の急性増悪と診断され入院した.保存的治療で軽快せず,内視鏡下に膵管ステント留置術施行され症状軽快したため一時退院した.しかし再度症状悪化し,膵頭部の膿瘍形成とステント留置部より尾側の膵管の拡張を認め再入院した.繰り返す膵炎と膵頭部の膿瘍形成のため,外科治療を選択し膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織検査では主膵管は途絶し膵頭部に広範な壊死と周囲には線維性の被膜組織を認めた.術後経過は良好で術後25日に退院され,術後24カ月現在,耐糖能異常を認めず経過している.本症例は良性疾患に対する外科治療の適応を考察する示唆に富む症例であるため報告する.