日本臨床外科学会雑誌
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症例
局所進行膵癌術後の癌性イレウスに消化管バイパスとTS-1が有効であった1例
原 隆志高梨 節二川原 洋一郎
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2011 年 72 巻 11 号 p. 2926-2930

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抄録

局所進行膵癌術後の癌性腹膜炎に伴う消化管閉塞に2度のバイパス術とTS-1による化学療法が有効であった症例を経験した.67歳男性.2007年5月腹痛出現,腹部CTにて腹腔動脈,脾動脈浸潤を伴う膵体部癌と診断,北海道大学腫瘍外科にて腹腔動脈合併膵体尾部切除+門脈合併切除が施行された.術後Gemcitabine(GEM)を開始,2008年7月腹水貯留を伴う癌性腹膜炎によるイレウスを発症,経口摂取とTS-1開始を目標に回腸回腸バイパス術を施行.術後TS-1開始後腹水は急速に減少し退院.2009年5月十二指腸狭窄発症,本人の希望強く胃空腸吻合を施行し再度経口摂取可能となり,その2カ月後原病死となった.膵癌による癌性腹膜炎は腹水や消化管閉塞などQOLを著しく損なうが,患者さんの希望を十分に汲んだ上での積極的な消化管バイパス術と抗癌剤治療は症状緩和,延命に寄与する場合もあり,外科医として最後まで力を尽くすことが大切である.

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